tsucchi’s diary(元はてなダイアリー)

はてなダイアリー(d.hatena.ne.jp/tsucchi1022)から移行したものです

スパコンの日本最速争いが熾烈すぎる件

以前、東大、クアッドコアOpteron搭載の国内最速スパコンというエントリにて、東大のスパコンについて、

日本最速は間違いないだろうけど、(以下rya

と書きましたが、強力なライバルが出現です。

「地球シミュレータ」次期システムの最高計算速度は毎秒131兆回に - codezine

NECは、海洋研究開発機構の超高速計算システム「地球シミュレータ次期システム」を落札したと発表した。次期システムでは、システム全体のピーク性能が131TFLOPS(テラフロップス:1秒間に1兆回の浮動小数点演算性能)になる予定。

東大がピーク性能が 140[TFLOPS]で、次期地球シミュレータは 131[TFLOPS]なので、「東大圧勝じゃね?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません

なぜかというと、地球シミュレータがベクトル型で、東大がスカラー型とアーキテクチャが違うからです。一般的に(?)ベクトル型のほうが、理論値に近い数値が出やすいようです。(ベクトル型の方が、少ないノードで高い性能が出るからでしょうかね。)

たとえば、現行の地球シミュレータの場合、実行効率は
 R_{max}/R_{peak} = 35860/40960 = 87.5%
となっています。一方、スカラー型の TSUBAME(東工大)では、
 R_{max}/R_{peak} = 38180/49868.8 = 76.6%
と、10%以上の差があります。(TSUBAME の場合は 2.4GHz と 2.6GHz のプロセッサが混在してるので性能が出にくいという面もあるのでしょうけど。)

で、それぞれの理論値に、この R_{max}/R_{peak} を掛け算すると、

次期地球シミュレータ
131000(ピーク性能) * 87.5%(現行地球シミュレータの実行効率) = 114625[Gflops]
東大
140134.4(ピーク性能) * 76.6%(TSUBAMEの実行効率) = 107342 [Gflops]

なんと、ピーク性能(理論値)で劣る次期地球シミュレータが、東大スパコンを逆転してしまうのです。

東大スパコンクアッドコア Opteron だし、TSUBAME とは筐体あたりの CPU 数(やFPU数)が異なるので、単純比較はできないと思います。とはいえ、実行効率 80% としても、112107[Gflops] なので、まだ追いつきません。ここで逆に、次期地球シミュレータが 85% しか出せないという事態になると、111350[Gflops]となるので東大がようやく追い越します。

...とかなんとか、取らぬ狸の皮算用をしても仕方がないですね。何が言いたいかというと、両者とも油断なく頑張ってチューニングして、国内1位を争って、世界ランクでも上位を目指してほしいなぁ、と。

もっとも、次期地球シミュレータの登場は 2009年3月とのことなので、東大が稼動してから 1 年くらい空いてしまいますけどね。2009年だと、東工大も何らかの強化策を施してくるかもしれないし、もしそうなったらますます熾烈です。